何事にもうまい下手がある
歌がうまい人がいればそうでもない人がいるように、話がうまい人がいる一方でそうでもない人もいます。話がうまくなければ人に何かを伝えられないかといえば、決してそんなことはなく、朴訥に話される内容が実に興味深いこともよくある話。
米粒写経
では話し方の上手い下手が、どの程度伝わり方に影響するのだろうか。今日はその一例をここに残しておきたいと思います。これは「米粒写経」という居島一平とサンキュータツオの二人のお笑いコンビが開催したライブの一部です。
ガラパゴスイッチ
このライブ「ガラパゴスイッチ」では、いろんな方をゲストでお呼びして米粒写経の二人が話を聞くコーナーがあります。この会はハイパワーレーザー牛島さんが戦車の話をしたついでに、居島一平さんがランキング形式で戦艦の話をしていました。10位から順に空母信濃、空母大鳳、戦艦長門、潜水艦伊202が発表されてからの話。是非音声ありで聞いてほしい。
居島一平「第5位 戦艦大和。残念という意味では大和も残念だったの。世界に冠たる46cm主砲が、その威力を発揮されることもなく…。」
サンキュータツオ「一位かとおもいましたよ。」
居島一平「そこはやっぱりそうは行かないのよ。」
サンキュータツオ「戦績重視ということなんですね。居島さんは。」
居島一平「だってさ、戦績重視でなかったら船が気の毒じゃない。そうでしょ?」
サンキュータツオ「頑張った船を讃えてあげたいと?」
居島一平「当たり前じゃない!何言ってんのよ!」
ハイパワーレーザー牛島「大和はちょっと悲しいところしかないのが…」
居島一平「
そう。ただ、悲しさと悲劇性の高さにおいて、そして吉田満さんという大和の生き残りの方が書いた「戦艦大和ノ最後」。これは戦後文学の最高峰だと思いますよ。あの文語文で格調高く綴られた物語。ぜひ読んでください。今読めますから。吉田満さんという、元日本銀行のかたが従軍しているんですよ。3330何人位のうち、300人位しか生き残れなかった。文字通り本当の「男たちの大和」。その生き残りの内の一人なんですよ。その人が戦後すぐに書いたのが「戦艦大和ノ最後」。「はじめに神は天と地を創り給へり」みたいな文あるでしょ。文語文で綴られている従軍の回想録なんですよ。小林秀雄が絶賛し、三島由紀夫が褒めちぎり、林房雄が「日本人永遠の指導書である」と言った、オデュッセイアに繋がる歴史叙述の精神を生み出す、そこに繋がるものを大和は生んだんだよ!そして宇宙戦艦ヤマトの歌とかも全部ここからイメージ来ているわけでしょ。日本人の民族の血と汗と涙の結晶なんだよ!」
サンキュータツオ「じゃ1位でいいじゃん!そんなに言うんだったら!(笑)」
居島一平「
だから、だからこそ、最期が悲しすぎる。でもね、「ああいう最期で良かったんだ」という言い方をしたら、戦死者に対して失礼かもしれないよ。でも敢えて不謹慎は百も千も承知で言うけど、「ああいう最期を遂げられたからよかった」。よかったと言うのは何故か。ドイツは陸軍国だけど海軍にも力を入れていた。イギリスと覇権を競うために、ドイツも一生懸命努力をして戦艦を作ったんだ。それがビスマルクとか、ティルピッツとか、ドイッチュラントとか、プリンツ・オイゲンとか、色々作ったんです。作った中にドイッチュラントという巨大戦艦があった。
これは第一次世界大戦の時なんだけど。大戦でドイツが負けます。でもドイッチュラントは生き残っちゃった。その船をイギリス軍とフランス軍が、ドイツ人が全員が見ている前で沿岸から「ざまあみろ!持っていくからな!ほーれ!ほーれ!」って引っ張っていって、ドイツ人が全員見ている前でコテンパンに沈めたの。それをドイツ国民は血の涙を飲んで「クソーッ!」。その復讐心が第二次世界大戦の勃発に繋がっているんだよ!
だからさ、経済学者のケインズが「平和の経済的帰結(※リンク先は日本語訳のPDFです)」という論文を書いて、ベルサイユ講和会議を批判しただろ。ドイツをあまりいじめ過ぎちゃいけない。戦争に買ったほうが負けたほうをいじめ過ぎると復讐心を培っちゃうから。「テメーいつか見てろよこの野郎。必ず倍返しでぶん殴り返してやるからな!」という怨念を深く与え過ぎちゃいけないよと警告したのが、「雇用・利子および貨幣の一般理論」で有名な経済学者のケインズ。その警告を無視したイギリス・フランスの当局が第二次世界大戦でヒトラーに復習されたのは当たり前だよね。
そういうドイッチュラントみたいな悲しい目には、大和は合わずに済んだじゃないですか。悲しい最期だったかもしれないけれども、永遠に見せしめになるような、縄目の辱めを受けずに済んだんだよ!大和は!おめでとう!」
引き込まれる話芸
正直あまり関心がなかった話題でも、これほどスラスラと言われたら、思わず興味が湧いて何度も聞き返してみたり、Wikipediaでいろいろ調べてしまいました。上手なプレゼンが聞き手を行動に移したのです。
ちなみにyoutubeのコメントによると、この説明には間違いが含まれているらしいとのこと。何が間違っているのか私には分かりかねますので、分かった方はコメントか個別に連絡をいただけると嬉しいです。
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