補助金コンサルが言う採択率についての注意喚起

2024年12月17日、2024年度補正予算が参議院本会議で可決されて成立しました。今回は、これまでの中小企業向けの補助金の話と、これからの展望について私見を述べます。内容は2024年12月時点のものですのでご了承ください。

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補正予算とは?

補正予算とは、国や地方自治体が災害や物価高騰などに対応して、景気を下支えするために、当初予算成立後の年度途中に組む追加の予算のことです。 家計や企業を支援する経費を計上することが多く、年度内に複数回編成することもあります。簡単に言えば、年の初めに立てる「本予算(当初予算)」で基本的な計画を作って、「補正予算」で計画の修正や追加をする感じですね。

何事もPDCAが大切なのです。年の初めに「Plan」で計画して、その予算で「Do」計画を実行する。自然災害や経済状況の変化が起きれば「Check」して、補正予算を「Action」する。私はそんな風に考えています。

令和6年度 中小企業対策関連 補正予算

このブログを読まれている方は中小企業の経営者の方が多いと思いますし、補助金で検索して来られる方も多いようですので、中小企業の補助金の絞って話を進めますね。

令和6年度の中小企業対策関連の補正予算では、従来の「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」「事業承継・M&A補助金」が継続して募集されるようです。批判の多かった「事業再構築補助金」は「新事業進出補助金」と名前を変えて続きます。

令和6年度の中小企業対策関連の補正予算では、従来の「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」「事業承継・M&A補助金」が継続して募集されるようです。批判の多かった「事業再構築補助金」は「新事業進出補助金」と名前を変えて続きます。

「省力化補助金」も引き続き募集が続きます。5000憶円の規模で公募を開始したにも関わらず、補助対象となる製品カタログが充実していないので、あまり予算が消化されていないようです。こちらはオーダーメイド型の設備も対象になるようですので、補助対象となる設備投資が柔軟になるといいですね。

「省力化補助金」も引き続き募集が続きます。5000憶円の規模で公募を開始したにも関わらず、補助対象となる製品カタログが充実していないので、あまり予算が消化されていないようです。こちらはオーダーメイド型の設備も対象になるようですので、補助対象となる設備投資が柔軟になるといいですね。

これまでの流れ

事業再構築補助金への批判

2023年11月に政府の「秋の行政レビュー」が実施されました。行政レビューの目的は、各省庁の事業進捗や施策の効果を検証し、質が高く効率的な行政を実現することです。

そのレビューで、批判の的となったのが「事業再構築補助金」です。「専門家から、廃止を含めた抜本的な見直しや新規採択の停止を求める意見が続出した」との報道が相次ぎました。

事業再構築補助金の功罪

2021年3月に公募が開始された「事業再構築補助金」は、コロナ禍での大胆な挑戦を加速させる補助金として、建物や内装も補助対象になっており、事業者にとって使い勝手の良いものでした。

実際に、多くの企業がこれまでの強みを生かして、新しい市場に進出したり、新しい製品やサービスを世に出すことになりました。その一方で、当時の流行に乗っただけの事業(サウナ、インドアゴルフ、フルーツサンドなど)が多数採択されてしまっていました。

事業再構築補助金は、当時の流行に乗っただけの事業(サウナ、インドアゴルフ、フルーツサンドなど)が多数採択されてしまっていました。

流行に飛びつくのは「機を見るに敏」な経営者の判断力と、機動力の高い中小企業ならではのものですので、批判の対象にするべきではないと思います。ところが、国の税金を使って、一部の事業者に特定の事業をやらせることになったのは、批判を免れませんね。

申請支援者の功罪

特定の事業が数多く採択された背景には、補助金を申請支援を行うコンサルタントの存在があると考えられています。特定の事業の申請支援に特化しておくことで、申請に必要な事業計画書の作成を大幅に効率化できてしまいます。

「事業計画書なんて作成したことが無い。何から手を付ければいいかも分からない。」このような事業者でも補助金申請という土俵に上がるためには、支援者の支援が必要不可欠です。補助金の申請をきっかけに、事業計画を作成することを学び、計画と目標を持った経営を行う事業者が増えたのは、社会的に良いことだと思います。

ちなみに2020年の中小企業白書では、小規模事業者の約半分が経営計画を策定していないことが明らかにされています。かなり多いですね。中規模企業だと7割が策定しています。

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b3_2_1.html

その一方で功罪の「罪」の方。類似申請で支援料を稼ぐ支援者に対しては、審査が厳格化されると考えています。(AI等で類似申請を発見して全部不採択にするとか。)ちなみに批判の対象となった後の事業再構築補助金の12回公募では、下記のように類似申請は申請しない可能性があると記載がありました。これは今後の他の補助金にも波及していくと思います。

今後の展望

事業再構築補助金が批判の対象になったことから、経済産業省系の補助金は予算が縮小、もしくはなくなってしまうことが危惧されていました。

ところが補正予算のフタを開けてみると、その額は前年度の額を超える内容となっていました。

補助金バブルの再来

多くの事業者にとって補助金活用の期待が高まると当時に、補助金を申請支援するコンサルタントもまた、稼ぎ時が来たと心を躍らせていることでしょう。

仮に採択率20%であったとしても、1000万円の補助金が見込めるのであれば、期待値は200万円です(1000万円×20%)。支援料としてコンサルタントに100万円支払っても黒字になりますので、申請する価値はありそうです。

申請支援料の価格破壊?

ちゃんと調べてはいませんが。補助金申請の支援料は、着手金10万円+成果報酬10%くらいが相場でしょうか。成功報酬10%に上限が設定されていると良心的なような気がします。なぜならば、補助金申請額が3000万円の申請支援案件は、申請額500万円の案件よりも6倍の手間暇がかかるというわけではないからです。

私が思うに、支援するのにかける時間 × 独自のノウハウ × 時間単価=支援料 となりますので、あまりにも高額な支援料を設定しないのが本当のプロフェッショナルではないでしょうか。ちなみに私は上限で100万円(税抜)で設定しています。詳しくは下記のサービス内容をご覧ください。

では、補助金申請支援の競争によって、支援料の価格破壊が起こるかと言えば、そんなことは起こらないと思います。コンサルタントに補助金申請支援を依頼するとしても、無料面談等を行って比較検討するのは、手間暇を考えるとせいぜい2~4社ではないでしょうか。

支援料のような高額の報酬では、「高いサービスは質も高い」と感じる「価格バイアス」が生じます。もし価格破壊を起こすコンサルタントがいたとしても、「価格が低いと質も低いかもしれない」と思われて、事業者から選ばれることは少ない気がします。

補助金申請支援コンサルタントの選び方

安すぎたら選ばれないとすると、補助金申請支援コンサルタントはどのように選ばれるでしょうか? 選ぶ基準としては、人柄やレスポンスの速さなどの定性的なことや、実績などの定量的なことが挙げられます。

定量的な実績に関しては、主に「申請件数」や「採択率」を公言することが多いようですので、ここではこの2つについて解説します。

申請件数

申請件数はその名の通り、その補助金に何件の申請を支援したかを表します。

補助金の公募要領は毎回ちょっと変わりますので、変わった経緯や理由を把握しているコンサルタントは、その補助金では何を求められていることを深堀りして理解しています。その結果、採択率が高い事業計画書を作成することができるようになります。

前述の「類似申請は審査しないよ」の注意書きの追加がまさにそれですね。ここを深堀りすると、「各社オリジナルの強みや機会を反映した事業計画書で申請して下さい」「どの企業にも実現可能な事業には採択出しませんよ」となります。

そして、申請件数はそのコンサルタントにどれだけ相談が来ていたかを評価する軸にもなります。実績があって紹介が紹介を産んでいるコンサルタントだったり、広告にお金をかけることで「補助金 申請支援」等の検索で上位に表示されたり、土日や深夜の無料相談も対応することで、相談件数を稼ぎ、結果的に申請件数を増やしています。

例として「補助金 申請支援」の検索結果の手前には 広告が5件出てくる

どんな手段や方法にしろ、申請件数の実績がある程度あるコンサルタントであれば、選択肢に入れる価値はありそうです。

採択率は重要?

その一方で、採択率はあまりあてにならないんじゃないかなというのが本記事の主張です。

「採択率100%!」と記載があると、「このコンサルタントは何かすごい!」と思ってしまうかもしれません。しかし、採択されるかどうか分からないような、コンサルタントから見て筋の悪い案件を断れば、採択率100%はそんなに難しいものではない気がします。

野球は、打ちやすい球を打つ競技です。わざわざ打ちにくい球を打ちに行くバッターはいません。ストライクゾーンで定義される範囲の中で、ピッチャーはなるべく打ちにくい球を投げて、バッターは打ちやすい球を打つ。「採択率100%」って、野球でいえば、「打ちにくい球は何球でも見送りしてきました」みたいな気がしてなりません。

もちろん、採択される可能性が低い事業計画を、社長と一緒に練り直すコンサルタントもいます。事業計画そのものをブラッシュアップすることで、採択される事業計画にしてしまう。野球でいえば、打ちにくい球がきたけどバッティングフォームを見直して得意球に変えました、みたいな感じです。すごい。

採択率は重要

それでもやっぱり採択率は重要です。前言撤回するわけじゃないですよ。

打ちにくい球は何球でも見送りして採択率を上げてきました」というのは、何件も見送ることができるくらいに補助金の申請支援の相談が来ていたということです。100件の補助金申請支援の相談を受けて、10件の申請支援を行ったとしても、90件が無駄になっているわけではありません。

「その計画だと採択は難しそう」や「その計画は公募要領の申請要件に合わない可能性が高い」など。90件の無料相談を受けることは、10件を受注するときの判断基準を作っているんだと思います。野球で言えば打ちやすい球を選ぶのが上手になっているような感じです。

そして、そもそも100件の無料相談を受けるためには、高額のWeb広告を支払うだけの十分な支援料の見込みや、信頼できる先からの紹介が必要なので、他の仕事の片手間に補助金申請支援を行っていることはなさそうです。

最後に

長々と4000文字近く書いてきましたが、とりあえず「採択率100%」には過度な期待をしない方が良いですよということです。ちなみに私は難易度が高く支援しがいがある案件も担当してきたので、採択率は90%程度です。

現在は補助金申請支援は一休みしていますが、無料の相談は承りますので、興味がありましたらお問合せからご連絡いただけますと幸いです。

西優
3000件の事業計画書を読んできた実績があります!
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この記事を書いた人

千葉と東京を中心に中小企業の支援を行っている中小企業診断士です。千葉県中小企業診断士協会理事、生成AI研究会幹事。
2019年診断士取得、毎日着物生活は6年目に突入しました。穏やかな語り口と着物の見た目から、経営者の悩みを聞いたり、従業員の本音ヒアリングを得意としています。
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