着物を着るのは裕福? 家計調査年報で証明

先日は普段着着物について約1万文字の文章を投稿しました。おかげさまで「中小企業診断士 和服」「中小企業診断士 着物」の検索結果で1位になりました!

まだお読みになられていない方は、お時間がある時に下記からご一読いただけますと嬉しいです。1万文字あるのでちゃんと読んだら10分以上かかりそうです。

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家計調査年報 収入階級別

さて今日は家計調査年報の収入階級別の話です。家計調査年報って何?という方は、下記の記事からご確認下さい。

家計調査年報には世帯の収入階級別に分類された統計データが含まれていて、収入の違いによる消費支出や貯蓄の傾向などを分析することができます。これにより、収入の階級ごとの経済行動の違いが分かります。

「収入」の「階級」って、階級社会や経済的不平等が想起されるんで、思想が左寄りの方から連絡が来そうですね。でも、統計的な文脈では「収入階級」という用語は、単にデータの分析のための分類であり、特定の政治的意図とは関係なく中立的に使われることが一般的なようです。

2023年の収入階級

家計調査年報では、世帯の年収が低い順に第1分位(最下位)から第5分位(最上位)までのグループに分割しています。各グループの世帯数は同じです。世帯の年収は毎年変わるので、各階級の年収の範囲も毎年変わります。参考までに2023年は下記のようになっていました。

階級総世帯の年収勤労者世帯の年収
1~¥2,390,000~¥3,730,000
2¥2,390,000~¥3,610,000¥3,730,000~¥5,150,000
3¥3,610,000~¥5,120,000¥5,150,000~¥6,670,000
4¥5,120,000~¥7,530,000¥6,670,000~¥8,730,000
5¥7,530,000~¥8,730,000~

総世帯の年収と勤労者世帯の年収

階級の区分けが2種類ある?」そこに気づかれた方はすごい。実はこの2種類に分けているのには、ちゃんと目的や使い方の違いがあるのです。

総世帯の年収

総世帯には、勤労者世帯だけでなく、年金生活者、生活保護受給者、個人事業主、無職の人がいる世帯など、幅広い世帯が含まれます。

総世帯の年収のデータを用いることで、社会全体における収入層の実態や格差を捉えることができます。特に、年金受給者などの高齢世帯や無職の世帯の収入や支出の状況も含めて分析することができるので、政策立案のために必要な社会全体の傾向を理解するために役立ちます。

総世帯の年収のデータは、社会全体の分析や経済政策の設計の際に使用します。これにより、全ての世帯層に対する影響や所得格差の問題、社会保障制度の必要性を把握することができます。

勤労者世帯の年収

一方、勤労者世帯とは、主に給与所得を得ている世帯を指します。労働年齢層を中心とした世帯構造であり、現役で働いている人々の収入と支出の特徴を反映しています。

勤労者世帯の年収データを用いることで、現役労働者の所得や消費行動をより詳細に分析することができます。これは特に労働市場の動向、企業における賃金変動、そして給与所得者が直面する経済的な課題に焦点を当てた分析に有用です。

労働市場の分析や労働者に特化した政策立案の場合は、勤労者世帯の年収を用います。これは、給与所得者の賃金水準や消費行動、家計の経済的な余裕を理解する上で重要です。

総世帯と勤労者世帯の年収の比較

総世帯と勤労者世帯の年収を比較するとこうなります。

項目総世帯の年収勤労者世帯の年収
対象世帯全ての世帯主に給与所得を得ている世帯
収入源給与、年金、社会保障、事業収入など主に給与所得
利用目的社会全体の収入状況の把握労働者の収入・消費行動の把握、賃金政策の立案
分析の視点全世帯にわたる収入・支出傾向労働年齢層の収入・消費傾向
政策立案の役割高齢者支援、所得格差解消や貧困対策の設計など労働者の賃金改善、経済的な支援や家計負担軽減策の立案など

収入階級別の和服への支出

では、具体的に収入階級別の支出について見てみましょう。ここでは収入階級別に和服について調べてみました。2002年から2023年までの総世帯の年間収入別の和服への支出は次の通り。

グラフを見ても明らかなように、和服への支出はここ20年で激減しています。

減り方の傾向を見てみると、2000年代は現在よりもどの階級でもそれなりの支出があって、特に階級5(収入の上位80〜100%の赤い棒)の世帯が買い支えていたことが分かります。その後は全体的に減少が続いていて、直近ではどの階級も和服への年間支出額が2000円以下になってしまいました。

2023年だけをピックアップしてみてみると次の通り。

階級5(収入の上位80〜100%)と階級4(収入の上位60〜80%)が支出の75%以上を占めていて、階級1〜3の支出はほとんどありません。身も蓋もない話ですが、ある程度のお金持ちしか着物を買わなくなっているわけです。肌感覚としてもなんとなくその通りの結果となっています。

和服への支出を増やす政策?

というわけで、総世帯の和服への支出を増やすためには、少なくとも20年前のように、どの階級の層からの支出を全体的に増やす必要がありそうです。

でも昨今先行き不透明な時代の中で、国民が和服への価値を再発見して和服の支出を増やす、そんな政策の立案は難しそうな感じですね。「お金持ちしか着物を買わない」という感覚は今後も続いていきそうな気がします。

逆張りの思考 着物編

「お金持ちしか着物を買わない」、これが真っぽいことが家計調査年報で明らかになりました。ということは、逆に着物を着ていれば、ある程度のお金持ちと思われるのではなかろうか。ここでは、逆張りの思考として着物を着るメリットをいくつか挙げていこうと思います。

意外と安い着物もある

目の玉が飛び出る程高い着物はたくさんあるけれども、数万円で買うことができるお手軽な普段着着物もあります。詳しくは下記の記事の「着物の買い方」をお読みください。木綿の着物だったら仕立て代込で数万円で購入することができます。

着物のブランドはよく分からない(人が多い)

さらに、着物を着ている人が少なすぎる結果、着物のブランド価値は洋服ほど分からないという事実があります。有名ブランドの洋服だったら、ロゴの他にも特有の模様、特徴的なシルエットや柄があります。ところが、着物にはブランド物の洋服ほどに認識されている特徴がないと思います。

もちろん、これは私個人の意見でして。「加賀友禅の◯◯先生には◯◯の特徴があるだろう」とか「小千谷縮には独特の凸凹が表面にあるよ」とか、そんな話をしているわけではありません。ルイ・ヴィトンのモノグラムみたいな、広く認知されているブランドの特徴は無いよねという話。

であればこそ、それなりの着物をそれなりに着ていれば、周りが勝手にお値段以上の価値を見出してくれる可能性が高いと思います。

着物は汚れてもOK

ところで、白いYシャツの襟や袖口が汚れているとどう思います? この人のYシャツ汚れているな、あまり細かいことに気配りできない人なのかな、新品のYシャツを買うお金がないのかな。のようにネガティブなことを考えてしまうかもしれませんね。

この考えは、白いYシャツは白くなければならないという社会的な思い込みと、その思い込みで白いYシャツをクリーニングに出したり漂白したりしている自分自身の経験からくるものであると思います。

他にもシャツの袖口はジャケットの袖から1~1.5cm程度出ているのが美しいとか、ジャケットはお尻が隠れる長さ、ネクタイの幅・結び方・長さ、靴の種類、靴下の色や長さなど。洋服(特にスーツ)には数え切れないほどのルールがあって、そのルールが守られていないと、相手にマイナスの感情を与えてしまいます

一方着物はどうでしょうか? 冠婚葬祭には礼服という概念があるので、なんとなく社会的に認知されていますが、礼服以外には特に細かいルールは知られていないように思います。もちろん左前(左側の前身ごろを右側の前身ごろの上に重ねるルール)や、背中心を合わせるなど、基本的なルールはありますが、これらは動きやすく着物を着るためのルールであるように思います。

着物を着る方があまりいないこと、着物の襟や袖口は決して汚してはならないという不文律は(たぶん)無いこと、着物をクリーニングに出したり洗濯したりしている人はあまりいないこと。これらのことから、着物はちょっとくらい汚れてても、洋服ほどネガティブな感情を持たれないのではないかなと思っています。

結論

長々と書いてきましたが、それなりの着物はそれなりに安く買えます。着物を買う人が少なくなっている今、逆にそれなりの着物を着ていると、それなり以上の年収があるように思われます。そして、少しくたびれた着物であっても、洋服ほど相手に不快感を与える可能性は低いです。

メリットとデメリットをまとめると次の通り。今回はメリットしか書いてませんので、デメリットに関してはいつか記事にしたいと思います。

メリットデメリット
着物はそれなりに安く買える
それなりの着物は値段以上の価値があるように思われる(たぶん)
着物を着ているとある程度の年収があると思われる(たぶん)
着物は少しくらい汚れててもネガティブな感情を持たれにくい(たぶん)
目立つ
すごいお金持ちと思われる可能性がある
着物警察から意味不明なルールを指摘される
洗った着物を干すのに場所を取る
夏暑い、冬寒い
何を履けばいいか分からない
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この記事を書いた人

千葉と東京を中心に中小企業の支援を行っている中小企業診断士です。千葉県中小企業診断士協会理事、生成AI研究会幹事。
2019年診断士取得、毎日着物生活は6年目に突入しました。穏やかな語り口と着物の見た目から、経営者の悩みを聞いたり、従業員の本音ヒアリングを得意としています。
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