献血とギバーの精神について

秋葉原の献血ルーム(akiba:F献血ルーム)で400mlの献血をしてきました。この献血ルームは、広くて漫画や雑誌がたくさんあって、ゲームやアニメのコラボ展示があって、面白いところです。

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献血ルームは仕事がはかどる

ふと気づいたのが献血ルームのポテンシャルです。 驚くほど快適な事務作業スペースであることに気づかされました。

  • フリードリンク完備
  • 窓際の席には電源がある
  • 清潔で静かな環境
  • お菓子とアイスをもらえる

まさに、ノマドワークをするには最適な環境が整っています。献血の間隔制限のため、1ヶ月に1回程度しか使えないという点を除けば、これほどコストパフォーマンスと環境が良い場所もそうそうありません。

受け取ったバトンを、次は誰かに渡す

実は2023年、私は「ギラン・バレー症候群」という神経疾患に罹患しました。 手足に力が入らなくなり、感覚が麻痺していく恐怖。経営コンサルタントとして伴走支援を続けることが当たり前だった日常が、突然強制停止させられた瞬間でした。

その時、私の治療に使われたのが「免疫グロブリン療法」です。1本数万円の点滴を数時間おきに5日連続で投与してもらいました。

免疫グロブリン製剤は、健康な人の血液(血漿)から作られます 何千、何万という誰かの献血によって集められた血液から、有効成分を抽出・精製して作られる薬です。

今日、私が献血ルームで行った献血は、かつての私を救ってくれた免疫グロブリンの原材料になる可能性があります。 誰かの神経疾患の治療や、手術時の輸血として使われるかもしれません。

「受け取ったバトンを、次は誰かに渡す」

献血ルームでPCを開きながら、社会貢のサイクルの中に自分が組み込まれていることを強く実感しました。

見えないステークホルダーへの想像力

私が免疫グロブリンを打ってもらった時、献血してくれた「誰か」の顔は見えませんでした。(そもそも免疫グロブリンが何なのかも知りませんでした) 私の今日の血液を使うことになる「誰か」の顔も、私には見えません。

ビジネスにおいても同様です。 直接の顧客や取引先(見える相手)だけを見て商売をするのは、実は簡単です。しかし、いい会社を作るためには、「見えないステークホルダー」への想像力が不可欠です。

  • 自社の製品が廃棄された後、環境にどう影響するか?
  • 自社の人材育成が、業界全体のレベルアップにどう貢献するか?
  • 自社の納税や地域活動が、巡り巡って次の市場をどう育てるか?

私が病床で「顔の見えない誰か」に救われたように、皆様の会社もまた、社会という大きなエコシステムの中で、顔の見えない誰かの仕事やインフラに支えられて存続しています。

利益を上げることはもちろん重要です。しかし、それ以上に「社会という身体の中に、新鮮な血液(価値)を送り出し続ける」という意識を持てているでしょうか?

「恩送り」という経営資源

中小企業診断士の仕事以外でも社会貢献したい、という私の想いは、単なる自己満足ではありません。 「Pay It Forward(恩送り)」の精神は、実は最強のブランディングであり、組織文化の核になり得ます

「奪い合う組織」は脆いです。短期的には勝てても、危機(病気や不況)が訪れた時に、周囲からの輸血(支援)を受けられません。 一方で、「与え、循環させる組織」は強い。なぜなら、その組織の存続を社会や周囲が望んでくれるからです。

利他の思想

つまり、この利他の思想を事業に組み込むことは、会社を成長させるうえでとても重要なことなんです。言葉や表現の違いはあれど、多くの会社の企業理念の中に社会貢献が含まれているので、きっとそういうことなんでしょう。

自分のリソース(私の場合は血液や時間)を割いて、見返りを求めずに提供する。 これは、短期的な損得勘定だけで動く組織には絶対にできない挑戦です。

今日の献血ルームは、私にとって以下の2つの意味を持っていました。

  1. 診断士としての生産活動(Take): 快適な環境でブログを書きつつセミナー資料を作る。
  2. 人間としての生命活動(Give): 血液を提供し、未来の誰かを救う。

この2つは矛盾せず、同時に成立します。 経営も同じです。「利益追求」と「社会貢献」は、バランスを取るものではなく、同時に回すエンジンみたいなものなのです。

明日への一歩

あなたのお仕事は誰かの免疫グロブリンになっていますか?
あなたの会社が存在することで、社会の何かに貢献していますか?

もし、「日々の資金繰りや競合対策で精一杯だ」と感じているなら、一度視点を変えてみるのもいいでしょう。 いきなり大きなCSR活動をする必要はありません。私のように、まずは身近な献血ルームに行ってみるだけでも良いのです。

私の血管に針が刺さり、血が抜かれていく感覚。それは痛みを伴いますが、同時に「自分が社会の役に立っている」という確かな手応えがありました。

経営における何かのコストや負担も、それを「社会への輸血」だと捉え直して、苦痛ではなく誇りに変わるといいですね。

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この記事を書いた人

千葉と東京を中心に中小企業の支援を行っている中小企業診断士です。千葉県中小企業診断士協会理事、生成AI研究会幹事。
2019年診断士取得、毎日着物生活は6年目に突入しました。穏やかな語り口と着物の見た目から、経営者の悩みを聞いたり、従業員の本音ヒアリングを得意としています。
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