山月記経営を世の中に広める
「失われた30年」という言葉が言われるようになって、日本社会全体が元気が無い時代が続いています。このままでは、日本の経済と社会がますます停滞し、活気を取り戻すことが難しくなります。
中小企業診断士として活動するにあたり、皆が元気で生き生きと働ける社会を取り戻したいと願い、山月記経営という経営コンセプトを立案しました。
1.山月記経営とは
1-1 人間関係を大切にする
山月記経営では、山月記の李徴を反面教師として「人間関係を大切にして、社員満足・顧客満足・高収益・社会貢献の好循環を実現する会社」を目指します。
人は「認められている」という感覚が得られると、仲間意識が向上し、チームワークが形成されます。山月記の李徴は山に引きこもって詩作に没頭したために、この「認められている」という感覚が得られませんでした。
山月記経営では上司や部下、同僚、他部署、お客様、取引先など、様々な人々とお互い認め合います。その結果、人間関係が良くなり、仕事が面白くなるとともに、win-winの関係を築くことができるのです。
そして社員の働きがいが高まり、仕事の質が上がることでお客さまが喜び、お客さまから選ばれ続けることで収益性が高まり、地域・社会に対してのお役立ちを提供することができます。利益が確保できることで、賃金水準が高まるとともに、労働条件が改善されて働きやすさも向上し、社員にとって魅力ある職場となるのです。
さらに、社員は仕事・会社に対してのプライドが高まり、日々成長を目指して仕事をするようになります。個が成長することで、仕事の質が益々上がって更なる顧客満足の向上につながり、好循環が続くのです。
1-2 何度も立ち上がって考える
時には思ったような結果が得られないこともあるでしょう。失敗することもあるでしょう。心が折れそうになっても何度も立ち上がり、新しい一歩に踏み出す。山月記経営ではそんな心のあり方を目指します。
人間関係の上では、山月記の李徴は反面教師でした。その一方で何度も考える点では、山月記の李徴は教師そのものです。袁傪に会って別れるまでの数時間の間で、李徴は自分が虎になった理由をいくつも挙げています。虎になるという絶望の中でも考えを巡らせる、そんな心の在りようもまた「山月記経営」と呼びます。
2.山月記経営の実現方法
2-1 経営幹部全員が全社員の成長と幸せを心から願う
「全社員が仕事を通して成長し、物心両面の幸せ(働きやすさ・働きがい・高い賃金水準)を感じることのできる職場づくり」が経営幹部の使命です。経営幹部全員がこの思いを共有する必要があります。
2-2 経営幹部の人間力を高める
人間力=人格×人間的魅力です。経営幹部は人格を高め続けるとともに、人を惹きつける魅力を身に着けることが求められます。人間力なくして真のリーダーシップを発揮することはできません。
2-3 経営理念やフィロソフィなどを言語化して全社に浸透させる
全社員が「山月記経営」に共感し、行動につなげるためのわかりやすい文書づくりと、それを継続させるための仕組みづくりが必要です。
2-4 社員の声を聞き、可能な雇用管理改善対策を毎年実施する
人の意識はすぐには変わりません。働きやすさと働きがいについて、「職場に関する意識調査」などで社員の満足度の実態や要望を定期的に把握し、「魅力ある職場」に近づけるための具体的方策を検討し、実施することが求められます。
2-5 社員間のコミュニケーションを高めるための施策を立案し、継続実施する
「山月記経営」実現のためには、人間関係がすべての基本です。サンクスカード、職場懇談会、懇親会、レクリエーション、社員旅行などの施策を検討しましょう。
2-6 社員の成長のための「教育体系」を構築し、継続実施する
お客さまから選ばれ続けるためには、個の能力向上が必須要件です。社内研修の定期開催に加え、個別教育計画に基づく成長面談を毎年行うことをお勧めします。
2-7「顧客満足度調査」などで顧客の声を聞き、可能なものは経営計画に反映させる
それらの活動が一人よがりになっていないかを検証するためには、お客さまの声を定期的に聞くことが最も重要です。お客さまの満足なしには高収益を上げ続けることが絶対に不可能です。
2-8 ベクトル合わせ、モチベーション向上、能力開発のための「人事制度」を構築する
働きやすさと働きがいを高める観点から、人事評価制度・報酬制度の策定・改定を行うことで、社員のベクトル合わせ、モチベーション向上、能力開発を図ります。
2-9 上記の活動を定期的にモニタリングする
「経営会議」などで上記取り組みの進捗状況を確認し、継続的改善を行います。そのためには、「山月記経営」の責任者を任命することが効果的かもしれません。
最後に
山月記経営は一朝一夕には実現できません。経営幹部全員の堅い決意の下、粘り強く取り組むことが必要です。時と場合によっては自社だけでは難しい場合もあるでしょう。山月記経営研究所では、山月記経営の実現に向けた支援を行っています。
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